おすそわけのある暮らし集う、つながる、新所 おすそわけのある暮らし集う、つながる、新所

住人インタビュー
新所に残るコミュニティーを次世代につなげる。
(株)コ・ファーミング新所 代表取締役 夏目和久さん
新所に残るコミュニティーを次世代につなげる。
当たり前に続くと思った
「農のコミュニティー」がなくなる
「50歳を過ぎると、誰と老後を過ごしたいか考えるようになりました」と話す、新所で生まれ育った夏目さん。湖西市にある新所地区は古くから農業が盛ん。専業農家は減ったけれど、企業に勤めながら週末などに農業をする兼業農家や、定年後、仲間たちとのんびり農業を楽しむ年配者の姿を見ることができます。「自分もそんな一世代上の先輩と同じような人生を送るのかなと漠然と思っていました」。
そんなとき地元の先輩から、「お前たちが60歳になる頃には、新所の農業はなくなるぞ」と言われます。夏目さんの世代には兼業農家がほとんど見当たらず、定年後に農業をしたくても、同世代に農業のスキルやノウハウを持つ人がいないことに気が付きます。農業の経験が乏しいだけでなく、横のつながりもすっかり希薄になっていました。60歳までの残りの時間を農業のための準備期間にするため、長年勤めた会社を辞めることを決意。同世代だけでなく、若い世代の人たちとも一緒に過ごせるコミュニティづくりを目的にした、「株式会社コ・ファーミング新所」を立ち上げます。
場を耕し始めると
人が集まり始める

「早期退職したというより、起業したという気持ちの方が強いですね」と笑う夏目さん。勤務先だった浜名湖頭脳センターで、入居する起業家たちからたくさんの刺激を受けていたことも大きかったと振り返ります。ボランティアやNPOではなく、株式会社という組織にしたのは、ちゃんとお金を稼ぎ、持続する活動にするため。今は農業をするかたわら、新所でコミュニティをつくるべく、さまざまなことにトライする毎日です。

主な活動は3つ。
1つは、新所の農地で作られる農産物を増やし、栽培された野菜を消費者に届ける青空市などを取り組むこと。
2つめに、新所で増えつつある耕作放棄地や空き家になった古民家を管理し、農泊(農村滞在型旅行)などとして活用すること。
3つめに、浜名湖の水辺を活かして、地域と人をつなぐ体験の拠点をつくること。

「とはいえ、他にもしたいことはいろいろあるんです」と笑う夏目さんの周りには、少しずつですが人が集まり始めています。浜名湖の楽しみ方を研究する地元の消防士、自然農法を学ぶ移住者、持ち運びできる小さな家を考案した建築家。さらに東京で働く同級生が新所での2拠点生活を検討するなど、個性と才能あふれる人たちばかり。「農業だけでなく、アーティストや作家の工房、サテライトオフィスにしてもらっても構いません。たくさんの人の協力が必要ですが、まだ始まったばかりの事業なので、ゼロからつくることを楽しめる人の方がいいかもしれませんね」。

新しく新所を訪れる人の相談役として期待される夏目さん。「数年後、浜名湖西岸の三ヶ日や入出、新居といった地域と連携したコミュニティができたらうれしいですね」と夢はふくらみます。夏目さんが60歳になったとき、新所がどのような場所になっているか、今から楽しみでなりません。